ゼミ紹介

史学科では分野ごとに11のゼミナールが設けられています。教員の個性、学ぶ対象の個性、それに学生の個性により、ゼミナールの個性が作られています。ここでは、その一端をご紹介します。

日本史ゼミ(6)
東洋史ゼミ(2)
西洋史ゼミ(3)

日本史

日本考古学ゼミ
        担当:小倉淳一
日本考古学演習はモノ(物質資料)を対象として歴史学的研究を行うゼミです。旧石器時代以降から近現代まで、人類が残した遺跡や遺物をもとに、過去の人間集団の動向を復元し検討します。授業では専門的な研究論文を講読して討論し合い、時代や地域を超えた方法論を磨き合います。考古学には「主人公」となる人物はほとんど出てきませんが、かつての人々が残したモノから大きな歴史のうねりを描き出すことを目指しているのです。人々が使うモノ、残されたモノすべてが、歴史を解く鍵になる可能性を秘めています。物質資料の観察・分類・分析を深めて新しい知見をまとめ、卒業論文として完成させます。「モノを見る眼」を養うことで、沈黙の資料である物質から新たな情報を引き出し、過去から未来までを見通す力をつけていくことができるのです。

日本古代史ゼミ
        担当:小口雅史
日本古代史ゼミでは、古代の研究に必要な様々な史料のうち、編纂史料と正倉院文書を主に扱っています。編纂史料には後世の編纂者の主観が入りがちなので、それを排除して客観的な史実を読み取る作業に取り組んでいます。一方、正倉院文書は第一次史料であって、古代の実態を知る第一級史料ですが、文書は編纂史料とは異なって、第三者に見せることを必ずしも前提にしていないので、読解が困難です。当時の人々の意識に遡って正確な読解ができるようになることを目標にしています。対象が難しいほど、それを正しく読み取れたときの喜びもひとしおです。多くの学生たちにそうした喜びを感じてもらうべく、ゼミ活動を展開しています。なお古代史の史料としては他に出土文字資料もありますが、これは日本史特講の方で担当してもらっています。

日本中世史ゼミ
        担当:大塚紀弘
歴史学は、史料に基づいて歴史像を描くという創造的な学問です。史料をどう解釈するかで、歴史像は変わってくるのです。日本中世史演習では、鎌倉幕府の歴史書である『吾妻鏡』を講読しています。学生には担当部分を読解するだけではなく、自分で論点を設定して考察し、何らかの見解を提示することを求めています。また、見学会や合宿では、史跡や博物館を訪ね、歴史の現場を体感してもらっています。授業での発表や卒業論文作成を通じて、歴史像は自ら作り出せるということを実感して欲しいと願っています。そのためには、教科書に書かれているような常識にとらわれず、自分で考え抜く意欲と行動力が大切だと思います。史学の研究によって培った「自由と進歩」の精神は、社会でも大いに役立つはずです。

日本近世史ゼミ
       担当:松本剣志郎
春学期は論文講読および史料講読(活字)、秋学期はゼミ生の研究発表をしています。夏合宿は、史跡見学ないし歴史体感、および史料閲覧を目的に、これまで高松・金比羅(2023年)、伊勢(2022年)、松本・鳥居峠(2019年)、金沢(2018年)、妻籠・馬籠(2017年)、仙台・松島(2016年)、会津(2015年)に出掛けています。春合宿は、卒論準備報告およびレクリエーションを目的に、関東近県で実施しています。レクのために、ゼミ生でお金を出してドッチボールを買いました。

日本近代史ゼミ
        担当:内藤一成
学問領域として日本近代史をみわたすと、眼の前に広がっているのは、厖大かつ多種多様な史(資)料の世界です。高校までの教科書で培った知識程度では、到底歯が立ちません。幅広い知識とともに、深い洞察力が求めらることになります。
日本近代史ゼミでは、春学期には原文書の解読と内容分析、秋学期には古文書解読に加え、研究発表に取り組みます。ゼミでの取り組みを通じて、歴史を多面的かつ重層的に捉える能力を身につけることをめざします。それとともにゼミでは、学生個々の疑問や関心を大切にし、興味の芽を伸ばしていきたいと考えています。なぜなら「好きこそものの上手なれ」だからです。

日本現代史ゼミ
        担当:柏木一朗
準備中

東洋史

東洋史物質資料学ゼミ
        担当:塩沢裕仁
東洋史は時代や地域幅が広いことから、文献と物質の2つの演習(ゼミ)に分かれている。この東洋史物質資料ゼミは日本でも珍しい独特なもので、2年生から遺跡や遺物、美術工芸品などについて調査と発表を繰り返し、その成果を4年生で卒業論文にまとめていく。また、中国語文献・論文の講読も行う。夏季休暇を利用して、協定する上海の復旦大学文物与博物館学系や洛陽の龍門石窟・少林寺などの世界文化遺産研究所に研修旅行に出掛けたりもしている。

東洋史文献資料学ゼミ
        担当:齋藤勝
文献史料を中心に東洋史を研究したい方向けの演習になります。もっとわかりやすく言うと、物質資料(考古・美術資料等)を用いない方向けの演習です。担当教員は漢文史料を用いた中国古代史を専門にしていますが、演習では時代や地域はとくに限っておらず、これまでも時代は古代から現代まで、地域は中国だけでなく東南アジア、中央アジア、西アジアなどを研究する学生が履修してきました。そのため、授業では漢文だけでなく日本語・中国語・英語の文献を扱ってきました。ただ、それぞれの関心や扱う言語があまりにかけ離れていますので、履修する学生個々の裁量や努力が問われる演習になっています。なお、自分が研究したい地域の言語は必ず学ぶことが求められています。

西洋史

西洋前近代史ゼミ
        担当:内田康太
西洋前近代史ゼミでは、春学期に英語で書かれた研究文献の講読、秋学期に参加学生による研究報告を行います。文献講読については、古代ローマの政治史関連のものを中心的に扱い、研究文献の読み方を学んでもらう予定ですが、学生による研究報告は各自の関心に沿って実施します。ゼミ生の関心は幅ひろく、その範囲は西欧世界以外にも古代オリエント世界や中世ビザンツ世界も含みます。また、分野的にも、政治史ばかりでなく、経済、社会、軍事、宗教、文学、美術、建築、音楽など各人の関心は様々です。このような特長を生かして、ゼミの場が、担当教員と学生が意見を交わし、相互に刺激を得られる機会となることを期待しています。

西洋近代史ゼミ
        担当:皆川卓
歴史を学ぶのに大事なのは、「違う感覚」に堪える耐性です。なぜなら勉学から習俗まで現代の生活経験につかって生活する私たちは、どうしても現代の認識を正しいと考えてしまうからです。歴史が書かれる時代を反映するのは避けられませんが、過去の感覚を掴めないと、描くのは空想の世界になってしまいます。そこで西洋近代史ゼミでは「近代」のモノの考えを相対化するために、まずはその草創期の人々が書いた文献(すなわち「史料」)を和訳で読み、「近代」とは何なのかを自分なりにつかんでもらいたいと思います。ゼミ生の人生経験が違う以上、それが違っていても全く構いません。多様性の出会いこそ創造力の源泉です。

西洋現代史ゼミ
        担当:大澤広晃
主に帝国主義の時代以降の西洋の歴史を学んでいます。現代史というだけあり、現代の諸問題に関心をもち、その歴史的な成り立ちを勉強してみたいという学生が多いです。「西洋史」のゼミに分類されていますが、グローバル化が進展する近現代世界において西洋は他の地域ともさまざまな関係を取り結びながら歴史を紡いできたので、アジアやアフリカなども頻繁に議論の対象に入ってきます。グローバルとローカルの視点を組み合わせながら、私たちがいま生きている現代世界がどのように形成されてきたのかをみんなで考えるゼミです。「ゼミは学生のもの」というのが私の信念です。ゼミでの学習内容などは、できるだけ学生と相談しながら決めています。また、コロナ禍でなかなか実現しませんが、教室の外でゼミ生と交流するのも大好きです。事態が落ち着いたら、食事会や合宿などを積極的に企画していきたいと考えています。